480万円が高いか安いかは、この文面だけでは誰にも答えられません。ただ、「妥当かどうかを自分で判断できる状態」には持っていけます。私が見るなら、次の順番で進めます。
1.まず、480万円を分けてもらう
金額そのものより、内訳が分かれているかどうかが大事です。次の4つに割ってもらってください。
- ソフトのライセンス費(何ユーザー分か)
- 導入作業費(設定・初期マスタ登録)
- データ移行費(10年分のどこまでを移すのか)
- カスタマイズ費(100万円が何人日ぶんか)
特にカスタマイズは、「100万円」ではなく「何人日で、誰がやるか」を聞いてください。人日で出てくれば、他社の見積もりと比べられる形になります。逆に、ここを分けて出せない会社は、こちらの要件を細かく詰めていない可能性があります。
2.5年分の総額で比べる
保守が月3万5千円なら年42万円、5年で210万円です。初期480万円と合わせると5年で690万円。比較はこの数字でやってください。初期費用だけを見て安い高いを議論すると、だいたい後で逆転します。
そのうえで、保守に何が含まれているのかを書面でもらってください。「障害対応のみ」なのか、「法改正対応や軽微な修正も含む」のかで、中身がまったく違います。
3.データを自分たちで取り出せるかを、契約前に確認する
10年前のシステムでいちばん困るのはここです。次に乗り換えるとき、自社のデータをCSVなどで自由に取り出せるか。取り出しに別途費用がかかるのか。これを更新の契約前に確認しておくと、10年後の自分が助かります。
4.選択肢は「更新する/別のパッケージ/自分たちで作る」の3つ
相見積もりは取ったほうがいいと思いますが、同じ土俵にするために、口頭ではなく紙で要件を渡してください。凝ったものは要りません。「今できていること」を業務の順番に箇条書きするだけで十分です。受注入力、在庫引当、出荷、請求、締め処理——この粒度で構いません。それが要件定義書の原型になります。
そのうえで、3つ目の選択肢についても書いておきます。
自分たちで作る、という道について
私はもともとITシステム会社の営業でした。お客様の話を聞いて、何が必要かを整理して開発につなぐのが本職でした。その後、製造業の経営者になり、自社には紙のマスター台帳しかありませんでした。そこで、FileMakerを独学して6ヶ月で自社の販売管理システムを自分で作りました。今8年運用していて、必要になるたびに機能を足しています。
作ってよかったと思っているのは、安く済んだことより、後から自分で直せることです。取引の形が変われば画面も変わります。そのたびに見積もりを取って稟議を上げていたら、たぶん8年ももたなかったと思います。
効果としては、見積書の作成にかかっていた私の時間がゼロになりました。原価計算をして、利益を乗せて単価を出して、見積書のPDFを発行するまでが一つの流れになっているためです。入力画面の中に説明を書き込んであるので、マニュアルなしで事務スタッフが使っています。スタッフからは「めちゃくちゃ便利になった」と言われました。
ただし、注意点も正直に書きます。
- 全社の基幹を一気に置き換えるのは勧めません。受注も在庫も請求も同時に、は無理があります。
- いちばん痛い1業務から始めてください。見積、受注入力など、社内で誰かの残業になっている仕事が向いています。
- 社内に、触る人が1人は必要です。その人が異動や退職でいなくなると止まります。作る過程を2人で共有できるなら、そのほうが安全です。
私が他社に関わるときは、完成品を納品する形ではなく、その会社の方が自分で作れるようになるのを支える開発サポート型でやっています。現在2社が進行中です。作って渡すより時間はかかりますが、終わったあとに残るものが違います。
まとめ
いまの段階で決めるべきなのは、更新するかどうかではなく、比較できる材料をそろえることです。①内訳を4つに割ってもらう ②5年総額で見る ③データの取り出し条件を確認する ④今できていることを紙に1枚書く。この4つが終われば、480万円が高いのか妥当なのか、ご自身で判断できるようになります。